転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


213 僕、働きすぎなんだってさ



「あら、ちゃんと固まったのだと、また違った美味しさがあるのね」

 アイスクリームの魔道具を作ったその日の夜、晩御飯のデザートとして、みんなにちゃんと出来上がったアイスクリームを出してあげたんだ。

 そしたらみんな、美味しい美味しいって食べてくれたんだけど、そこでお母さんがこんな事を言ったんだよね。

「ねぇお母さん。ちゃんと固まったのだとって何の話?」

「ああ今日ね、スティナちゃんが遊びに来たのよ。このお菓子はルディーンがスティナちゃんにねだられて作ったんだけど、こんな風にちゃんと凍るまでには時間が掛かるからって、作ってる最中のを食べさせてもらったのよ」

 そしたらレーア姉ちゃんが何の事? って聞いたもんだから、お母さんが昼間スティナちゃんと一緒にまだ固まりかけのやつを食べたってお話をしたんだ。

「え〜、お母さんたちだけずるい!」

 それを聞いたキャリーナ姉ちゃんが怒り出しちゃったんだけど……なんで? だって、ちゃんと出来上がったアイスクリーム、今食べてるのに。

 そう思った僕が聞いてみたんだ。

「だって、これと作りかけだと味がちがうんでしょ? だったら、二人だけ食べたのはやっぱりずるい!」

「そうよね。私たちだって、その作りかけってのを食べてみたかったもん」

 そしたらキャリーナ姉ちゃんだけじゃなくって、レーア姉ちゃんまでこんな事を言い出したんだよね。

「作りかけって、まだ固まって無いってだけだよ? 食べたいんなら、ちょっと待って溶けたのを食べればいいだけじゃないか」

 だから僕、食べたかったらちょっと待てば食べられるじゃないかって言ったんだけど、そしたらお母さんがね、

「う〜ん、それはどうかしら? 今食べてみて思ったんだけど、解けて柔らかくなったところと、昼間に食べたあれとは少し違う気がするわよ」

 なんて言い出したんだ。

「え〜、おんなじだよ! だってこのアイスクリームは昼間のがちゃんと固まったもんだよ? だったら、それがちょっと溶けたんなら、おんなじもんにならないとおかしいもん」

「ええ、そうなのよね。でもね、こうじて実際に食べてみると、お母さんには別の物に感じるのよ」

 そう言うと、お母さんはちょっと溶けかかったアイスクリームをパクリ。

 そして、

「うん、やっぱり違うわね」

 こう言うと、お母さんなりに何で違っちゃってるのかを話してくれたんだ。

「あの作りかけのアイスクリームはずっとかき混ぜながら凍らせてたわよね。そして、あれ以上凍ってしまうとかき混ぜてる棒が取れなくなるからって、それを取り出してから更に凍らせたのがこれ。思うんだけど、かき混ぜながら凍らせる事で全体が均等に固まってるから口に入れた時に滑らかに感じたり、すべてが同じ冷たさだから口に入れた時も全部が一斉に溶けて違った感じがしているんじゃないかしら?」

「そっか、一度固まったのだと回りは溶けてるけど真ん中は凍ったまんまだもんね。作りかけのは全部が柔らかいまんまだから違うかも!」

 お母さんにそう言ってもらって僕、何で違うのかがやっと解ったんだ。

 だけどさ、それを横で聞いてたレーア姉ちゃんとキャリーナ姉ちゃんがやっぱりずるい! って怒り出しちゃったんだよね。

「味が違うんなら私たちも食べたい!」

「そうだよね。ルディーン、私たちにも作ってよ」

 お姉ちゃんたちは二人してこう言うもんだから僕、困っちゃったんだ。

「ダメだよ。だってみんなが食べたいって言うと思ったからいっぱい作っちゃったもん。アイスクリームは冷やしてるこの入れ物で作るんだから、全部食べちゃわないと次は作れないよ」

 だってうちには冷蔵庫はあるけど冷凍庫は無いもん。

 だから出来上がったアイスクリームは作った魔道具でそのまま冷やすようにしてあるんだよね。

 これを全部食べちゃわないと次は作れないけど、何度も作るのは大変だからって一度にいっぱい作っちゃったもん。

 家族みんなで食べてもすぐには無くなんないよ。

「だったら、もっとちょうだい! いっぱい食べて、早く次のを作ってもらわないと」

「あら、だめよ。カキ氷と同じでこれはとても冷たいお菓子でしょ? 一度にそんなにたくさん食べたら、お腹を壊してしまうわ」

 それを聞いたキャリーナ姉ちゃんが食べ終わったアイスクリームが入ってた器を僕の方に突き出しておかわりって言ったんだけど、それを見たお母さんがダメだって。

 そうだよね。

 アイスクリームは冷たいってのもあるけど、生クリームとかもいっぱい使ってるから一度にたくさん食べると気持ち悪くなっちゃうかもしれないんだ。

 だから早く減らしたいからって、そんなにいっぱい食べちゃダメなんだよね。

「だったらさ、ご近所の人に食べてもらったら? こんなに美味しいんだもん。きっとみんな喜んでくれると思うよ」

「う〜ん、確かに喜んではもらえるだろうけど、それはやめておいた方がいいな」

 そしたら今度はレーア姉ちゃんが、うちの近所の人たちに食べてもらったら? って言ったんだけど、そしたら今度はお父さんがダメだよって言うんだ。

 それを聞いたレーア姉ちゃんがなんで? って聞いたんだけど、

「近所の人たちに振舞ったら、他の人たちも食べたがるだろう? だけど、このアイスクリームという物を作るには魔道具が必要じゃないか。となると魔道リキッドを使うか、ルディーンに作ってもらわなければいけなくなってしまうじゃないか」

 そしたら、この頃はちょっと魔道具を使いすぎだからダメだよって。

 お父さんが言うには、僕が台車型の草刈機を作ったり冷蔵庫や冷凍庫を作ったりしてるもんだから、村中で今までよりもずっと多くの魔道リキッドを使ってるんだって。

 でも、うちの村では魔道リキッドを作るのに必要な溶解液は手に入らないし、手に入ったとしても作れるのは僕しかいないんだよね。

 だからどうしてもイーノックカウまで買いに行かないといけないんだけど、これ以上魔道具が増えると買いに行く回数を増やさないといけなくなっちゃうんだってさ。

「それに村では、流石にルディーンの仕事が多すぎるんじゃないか? って言う話にもなってるんだぞ。なのにこのアイスクリームを振舞ったりしたらどうなると思う?」

「みんな食べたがって、これを作る魔道具がいっぱい必要になっちゃうと思う」

「だろ? いずれ周りにも知られる事になるだろうけど、わざわざ自分たちで広める必要も無い。知らなければ誰も食べたいなんて思わないんだから、しばらくは内緒にしておきなさい」

 こうしてアイスクリームは僕んちだけで食べられる、特別なお菓子になったんだ。


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